作 業 環 境 管 理
作業環境管理は、作業環境中の種々の有害要因を取り除いて良好な作業環境を確保するために実施する。
作業環境管理を進めるに当たっては、まず的確な作業環境測定を行い、その結果を適切に評価することが
必要。そして、その結果から、局所排気装置など各種の設備の改善や適正な整備を行っていかなければ
ならない。
1 作業環境測定の実施
次表の事業場は、労働安全衛生法第65条の規定に基づき、一定周期ごとに測定を実施し、その結果を記録・保存しなければならない。
なお、指定作業場については、作業環境測定士が測定しなければならず、記録についてはモデル様式が示されている。
作業環境測定を行うべき作業場
作業環境測定は、測定対象ごとに
① 単位作業場所の設定方法
② 測定点の設定方法
③ 測定時刻及び測定時間の設定方法
④ 測定に用いる機器の種類
が作業環境測定基準に定められており、当該基準に基づいて
A測定単位作業場の濃度分布又はA測定と
B測定労働者が暴露される最も高い場所の濃度
を実施しなければならない。
2 測定結果の評価
作業環境測定の結果は、作業評価基準に基づいて適正に評価し、設備の改善等を行わなければならない。
作業環境評価基準では、A測定のみを実施した場合とA測定及びB測定を実施した場合に、それぞれ
第1表価値高濃度側から5%相当(評価基準でEA1と表示)、
第2表価値算術平均濃度の推定値(評価基準でEA2と表示)
と管理濃度の比較により、次のとおり区分、評価される。
A 測 定 | ||
---|---|---|
第1評価値<管理濃度 | 第2評価値≦管理濃度≦第1評価値 | 管理濃度≦第2評価値 |
第1管理区分 | 第2管理区分 | 第3管理区分 |
区 分 | A 測 定 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
第1評価値<管理濃度 | 第2評価値≦管理濃度≦第1評価値 | 管理濃度≦第2評価値 | ||||
B 測 定 |
B測定値<管理濃度 | 第1管理区分 | 第2管理区分 | 第3管理区分 | ||
管理濃度≦B測定値≦管理濃度x1.5 | 第2管理区分 | 第3管理区分 | ||||
管理濃度x105<B測定値 | 第3管理区分 |
管理濃度とは、管理区分を決定するための指標で、許容濃度とは異なり、 別表のとおり。
3 管理区分による事後措置
単位作業場の測定結果に基づく評価、管理区分に応じ作業環境改善を的確に講じ なければならない。
区分 | 作業場の状態 | 講ずべき措置 |
第1 | 濃度が単位作業場の95%以上の場所で管理濃度を超えない状態 | 現在の管理の維持に努める |
第2 | 濃度の平均が管理濃度を超えない状態 | 施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、作業環境改善のための必要な措置 |
第3 | 濃度の平均が管理濃度を超える状態 | ① 施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、作業環境改善のための必要な措置 ② 有効な呼吸器用保護具の使用 |
4 局所排気装置等の設置及び点検・検査の実施
(1) 有害物の作業環境中への拡散を防止するため、次の省令で局所排気装置等の設置が
義務付けられている。
① 有機溶剤中毒予防規則(有機則第5、6条
② 特定化学物質障害予防規則(特化則第3、4、5条)
③ 粉じん障害防止規則(粉じん則第4条)
④ 石綿障害予防規則(石綿則第11条)
⑤ 鉛中毒予防規則(鉛則第5~20条)
(2) 局所排気装置等については、その性能を維持するため定期自主検査や点検・検査を実施
しなければならない。
定期自主検査等一覧
なお、定期自主検査等の結果は記録・保存しなければならず、局所排気装置については 定期自主検査指針 が示されているので当該指針に基づく点検を実施しなければならない。
5 局所排気装置等の設置の適用除外
次に該当する場合は、局所排気装置等を設置しなくてもよい。
対象物 | 適用除外の条件 | 申請書 |
有機溶剤 | 屋内作業場又は船舶若しくは車両の内部のうち通風が不十分ではない場所等における 有機溶剤の業務(製造等に係るものを除く)で作業時間1時間当たりの有機溶剤の消費量が 許容消費量を超えない場合 | ― |
屋内作業場等のうち通風が不十分な場所における有機溶剤業務で、1日の消費量が 許容消費量を超えない場合 | ||
屋内作業場又は船舶若しくは車両の内部のうち通風が不十分ではない場所等における 有機溶剤の業務(製造等に係るものを除く)で作業時間1時間当たりの有機溶剤の消費量が 常態として許容消費量を超ず、労基署長の認定を受けた場合 | 第1号 | |
屋内作業場等のうち通風が不十分な場所における有機溶剤業務で、1日の消費量が 常に許容消費量を超えず、労基署長の認定を受けた場合 | ||
発散防止抑制措置 有機溶剤の蒸気の発散を防止し、又は抑制する設備又は装置を設置することその他の措置 を講じ、作業環境測定の評価が「第1管理区分」で、労基署長の許可を受けた場合 | 第5号 | |
特化物 | 作業場の空気中の第2類物質の濃度が、常態として有害な程度になるおそれがないと 労基署長の認定があった場合 | 第1号 |
発散防止抑制措置 第2類物質のガス、蒸気、粉じんの発散を防止し、又は抑制する設備又は装置を設置すること その他の措置を講じ、作業環境測定の評価が「第1管理区分」で、 労基署長の許可を受けた場合 | 第1号の2 | |
粉じん | 設備による注水又は注油をしながら、 粉じん則第3条に定める作業を行う場合 | |
呼吸用保護具を着用させて ①臨時繰り返されない作業であって、かつ、 作業を行う期間が概月を超えない場合の特定粉じん作業 粉じん則の別表第2に掲げる箇所で行う粉じん作業を行う場合 ②同一の特定粉じん発散源粉じん則の別表第2に掲げる箇所 に係る特定粉じん作業を行う 期間が短い 同一の特定粉じん発散源に係る同一の作業を行う期間が1月を超えず、かつ、6月以内に次の特定粉じん 作業が行われない場合場合 ③同一の特定粉じん発散源に係る特定粉じん作業を行う 時間が短い 同一の特定粉じん発散源に係る同一の作業が連日行われる場合は1時間以内、連日でないときは 1日当たりの平均作業時間が1時間以内の場合場合 |
||
呼吸用保護具を着用させ、全体換気装置等を設置して行う 粉じん則第8条に定める作業を行う場合 | ||
作業場の構造、作業の性質等から設置が困難で、労基署長の認定を受けた場合 | 第2号 | |
石 綿 | 設置が著しく困難 種々の場所に短期間ずつ出張して行う作業や発散源が一定しないために技術的に困難な場合など 又は臨時の作業一時的必要に応じて行う作業 を行うときで、全体換気装置の設置又は石綿を湿潤な状態するなどの措置を講じた場合 | |
鉛中毒 | 鉛中毒予防規則第8条に該当する場合 | |
発散防止抑制措置 鉛等又は焼結鉱等の粉じんの発散を防止し、又は抑制する設備又は装置を設置することその他の措置 を講じ、作業環境測定の評価が「第1管理区分」で、労基署長の許可を受けた場合 | 第1号の2 |