女性の雇用管理
1 女性の就業制限業務
女性については、次の業務に就かせることはできない(労基法64の3)。
(1)重量物を取扱う業務
年 齢 | 重量(単位 Kg) | |
断続作業の場合 | 継続作業の場合 | |
16歳未満 | 12 | 8 |
16歳以上18歳未満 | 25 | 15 |
18歳以上 | 30 | 20 |
(2) | 鉛、水銀、クロム、炭素、黄りん、弗素、塩素、シアン化水素、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、 蒸気又は粉じんを発散する場所における業務 | |
(3) | 坑内における「作業員の業務」 |
なお、深夜業に従事する女性労働者の就業環境等の整備に関し、次のような指針が出されている。
深夜業に従事する女性労働者の就業環境等の整備に関する指針
2 生理休暇
生理日の就業が著しく困難な女性は、生理休暇を請求できる。
妊産婦の保護規定
1 妊産婦の就業制限
妊婦及び産後1年を経過しない産婦には女性の就業制限業務のほか、
別表の業務に就かせることはできない。
なお、妊娠中の女性労働者から請求があったときは、他の軽易な業務に転換させなければならない。
2 妊産婦の労働時間等に関する制限
(1) | 時間外労働・休日労働 | |
妊産婦から請求があった場合はできず、非常災害(労基法33条)の場合も同様。なお、管理監督者の立場にある妊産婦 は、時間外労働・休日労働をさせることができる。 | ||
(2) | 深夜労働 | |
妊産婦から請求があった場合はできず、非常災害(労基法33条)の場合も同様。なお、管理監督者の立場にある妊産婦 から請求があれば、深夜労働をさせることはできない。 | ||
(3) | 変形労働時間制 | |
妊産婦から請求があった場合は、1日、1週間の法定労働時間を超えて労働させることはできない。従って、実質的には 変形労働時間制の適用が除外されることになる。ただし、管理監督者の立場にある妊産婦には変形労働時間制によって労働 させることができる。なお、フレックスタイム制は制限を受けない。 |
3 産前産後休業、母性健康管理等
(1) | 妊婦が請求したときは、産前休業、 産婦には請求がなくても産後休業させなければならない。 | |
産前産後休業に関する留意事項はこちら | ||
(2) | 生後満1年未満の子を育てている女性労働者は、育児時間を 請求することができる。 | |
(3) | 母性健康管理に関する措置 | |
妊婦及び産後1年を経過しない産婦については、母子保健法の規定による保健指導または健康診査を受けるために必要な時間
を確保できるようにしなければならない。 また、保健指導または健康診査に基づく指導事項を守ることができるように、勤務時間の変更、勤務の軽減など、必要な措置 を講じなければならない。 |
保健指導や健康診査に必要な時間の確保 | |||
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妊 婦 | 妊娠23週まで | 4週に1回 | 医師または助産師が左と異なる指示をした場合は、指示された回数 |
妊娠35週まで | 2週に1回 | ||
出産まで | 1週に1回 | ||
産 婦 | 医師または助産師の指示により、必要な時間を確保することができるようにしなけ ればならない。 |
4 妊産婦に対する不利益取扱の禁止
男女雇用機会均等法第9条第3項により、妊娠したこと、出産したこと、その他の妊娠又は出産に関する事由であって 厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して 解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
不利益取扱いの例
5 妊産婦に対するハラスメント対策
男女雇用機会均等法第11条の2により、妊娠したこと、出産したこと、妊娠又は出産に関する事由であつて 厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者 の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用 管理上必要な措置を講じなければならない。防止措置の内容については、次のとおり。
ハラスメントを防止するため事業主が講ずべき措置
性差別的な取り扱いの禁止
1 性別を理由とする差別の禁止
「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に間する法律」では、
★ 募集・採用
★ 配置・昇進・降格・教育訓練
★ 福利厚生、職種・雇用形態の変更
★ 定年・退職の勧奨・解雇・雇止め
について、性別を理由とする差別は、禁じられている。
また、賃金については、労基法で男女差別的な取り扱いを禁止している。
2 間接差別
性別を理由とする差別が禁止されている事項について、形式的には性別以外の理由による要件を設けていても、実質的
に性別を理由とする差別となるおそれがある一定の場合には、間接差別としてその取り扱いが禁止されている。
なお、性差別の禁止事項及びその該当事例は次のとおり。
性差別の禁止事項及びその該当事例
セクシュアルハラスメント
男女雇用機会均等法第11条により、
「性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動によ
り当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備そ
の他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」と規定している。
「職場におけるセクシュアルハラスメント」には「対価型」と「環境型」がある。
「対価型セクシュアルハラスメント」とは、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その
労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を
受けることで、「環境型セクシュアルハラスメント」とは、労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なもの
となったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどその労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることである。
セクハラ防止のために講ずべき措置は、次のとおり。
性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針
育児・介護休業
1 育児・介護休業に対する不利益取扱いの禁止
1 次の事由等を理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止している。
禁 止 事 項 | |
---|---|
1 | 育児休業(育児のために原則として子が1歳になるまで取得できる休業) |
2 | 介護休業(介護のために対象家族1人につき通算93日間取得できる休業) |
3 | 子の看護休暇(子の看護のために年間5日間(子が2人以上の場合10日間)取得できる休暇) |
4 | 介護休暇(介護のために年間5日間(対象家族が2人以上の場合10日間)取得できる休暇 |
5 | 所定外労働の制限(育児又は介護のための残業免除) |
6 | 時間外労働の制限(育児又は介護のため時間外労働を制限(1か月24時間、1年 150時間以内)) |
7 | 深夜業の制限(育児又は介護のため深夜業を制限) |
8 | 所定労働時間の短縮措置(育児又は介護のため所定労働時間を短縮する制度) |
9 | 始業時刻変更等の措置(育児又は介護のために始業時刻を変更する等の制度) |
2 禁止されている不利益取扱い
育児・介護休業に対する不利益取扱いの禁止例として、次のようなものが示されている。
2 育児・介護休業に対するハラスメント対策
育児・介護休業法第25条により、
育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該
労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇
用管理上必要な措置を講じなければならない。
対象となる事由は、上記の不利益取扱いの禁止に同じである。
なお、防止措置の内容は次のとおりである。
ハラスメントを防止するため事業主が講ずべき措置
年少者の雇用管理
1 年齢制限
原則として、満15歳に達した日以後の最初に迎える3月31日が終了するまでの間の児童は、労働者として使用することはでき
ない(労基法56)。ただし、下表に該当する場合で、労働基準監督署長の許可を受けた児童は使用することができる。
年 齢 | 就かせられる業種 | 就労要件 |
満13歳以上 | 非工業的業種(製造業、鉱業、建設業、運輸交通業、貨物取扱業以外の業種) | ①児童の健康、福祉に有害でないこと ②その労働が軽易なものであること |
満12歳以下 | 映画の製作、演劇 |
労働基準監督署長の許可を受けるには、児童使用許可申請書に
①児童の年齢を証明する戸籍証明書
②修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書
③親権者または後見人の同意書
が必要である。
2 年少者の労働時間
年少者とは、満18歳未満の者のことをいう。
年少者には、法定労働時間が厳格に適用され、原則として時間外・休日労働は禁止(労基法第33条に基づく非常災害時の
時間外・休日労働は可)、また、各種の変形労働時間制のもとで労働させることはできず、
労働時間の特例も適用されない(労基法60)。
ただし、例外的に、満15歳以上(満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの間を除く。)の者については、
① 1週間の法定労働時間の範囲内で、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮した場合には、他の日を10時間まで延長すること
② 1週間について48時間、1日について8時間を超えない範囲であれば、1ヵ月単位または1年単位の変形労働時間制により労働させること
が認められている。
なお、使用許可を受けた児童の労働時間は修学時間を通算して1日7時間、1週40時間である。
3 深夜業及び坑内労働の禁止
(1)原則として深夜(午後10時から午前5時までの間)に労働させることはできない(労基法61)。
ただし、
① 交替制によって使用する満16歳以上の男性については、深夜に労働させることができる。
② 交替制によって労働させる事業場については、労働基準監督署長の許可を受けて、午後10時30分まで労働させ、
午前5時30分から労働させることができる。
③ 非常災害の場合で時間外労働、休日労働をさせる場合には、必要の限度で深夜に労働させることができる。
(2) 年少者を坑内労働に就かせることはできない。
4 就業制限
年少者は、肉体的、精神的に未成熟であることから、重量物の取扱い業務、危険有害な業務、福祉面で有害な業務 などに就業させることが禁止されている(労基法62、63)。
年少者の就業制限業務
5 「年齢証明書」等の備付け
(1)年齢を証明する「戸籍証明書」を事業場に備え付けなければならないが(労基法57)、これについては、年少者の
氏名及び出生年月日についての証明がなされている「住民票記載事項の証明書」を備えればよいこととされている
(昭50.2.17 基発83号、婦発40号)。
(2)児童の場合は、さらに修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書及び親権者等の同意書を備え付けなければな
らない。