安全衛生教育(労安法59条1項)
雇入れ時又は作業内容変更時の安全衛生教育
労働者を雇入れ、又は作業内容を変更したときは、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する
安全衛生教育を実施しなければならない。
項目について十分な知識及び技能を有する労働者については省略することができる。
区分 | 教 育 項 目 |
---|---|
1 | 機械等、原材料等の危険性、有害性及びこれらの取扱い方法 |
2 | 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能と取扱い方法 |
3 | 作業手順 |
4 | 作業開始時の点検 |
5 | 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因と予防 |
6 | 整理、整頓及び清潔の保持 |
7 | 事故時の応急措置と避難 |
8 | 当該業務に関する安全と衛生に必要な事項 |
特別教育(労安法59条3項)
危険又は有害な業務に従事する労働者には、当該業務に関する教育を行わなければならない (安衛則36条)。
特別教育を行うべき業務
特別教育は、事業主が実施するのが原則で、規則には科目と時間が規定されていて、実施結果は記録し、3年間
保存しなければならない(安衛則38条)。
講師に関する規定はないものの、当然、当該科目について十分な知識・技能を有する者でなければならず(外部講師による実施も認められている。)、実施できない場合は、外部の教育機関等に委託することになるが、機関の選択に当たっては十分吟味しなければならない。
なお、十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、教育科目の全部または一部の省略が認めら
れている(安衛則37条)が、修了証等で確認できない
場合や当該業務から離れている期間が長くなっている場合などは再度実施すべきである。
特別教育の省略について
職長・安全衛生責任者教育
労働者の安全及び衛生を確保するうえで職長は要であることから、次表の業種に属する事業所にあっては、 職長教育を実施しなければならない(労安法60条)。
区分 | 業 種 |
---|---|
1 | 建 設 業 |
2 | 製 造 業 イ 食料品・たばこ製造業(化学調味料製造業及び動植物油脂製造業を除く。) ロ 繊維工業(紡績業及び染色整理業を除く。) ハ 衣服その他の繊維製品製造業 ニ 紙加工品製造業(セロファン製造業を除く。) ホ 新聞業、出版業、製本及び印刷物加工業 |
3 | 電 気 業 |
4 | ガ ス 業 |
5 | 自 動 車 整 備 業 |
6 | 機 械 修 理 業 |
安全衛生責任者は、統括管理が行われている現場で、統括安全衛生責任者との連絡調整を職務としている。
その資格は法令で定めておらず、厚労省通達で安全衛生責任者教育の修了者とされている。
安全衛生責任者は、職長と兼務することが多いことから職長教育と統合されて安全衛生責任者教育が実施されている。
職長・安全衛生責任者教育の項目及び時間数等
職 長 教 育 事 項 | 時間 |
---|---|
作業方法の決定及び労働者の配置に関すること。(労安法60条1号) 1 作業手順の定め方 2 労働者の適正な配置の方法 |
2 |
労働者に対する指導又は監督の方法に関すること。(労安法60条2号) 1 指導及び教育の方法 2 作業中における監督及び支持の方法 |
2.5 |
労安法第28条の2第1項の危険性又は有害性の調査及びその結果に基づき講じる措置に
関すること。(安衛則40条1号) 1 危険性又は有害性等の調査の方法 2 危険性又は有害性等の調査の結果に基づき講ずる措置 3 設備、作業等の具体的な具体的な改善能方法 |
4 |
異常時等における措置に関すること。(安衛則40条2号) 1 異常時における措置 2 災害発生時における措置 |
1.5 |
その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること。 1 作業に係る設備及び作業場所の保守管理の方法 2 労働災害防止についての関心の保持及び労働者の創意工夫を引き出す方法 |
2 |
安 全 衛 生 責 任 者 教 育 事 項 | |
安全衛生責任者の職務等 1 安全衛生責任者の役割 2 安全衛生責任者の心構え 3 労働安全衛生関係法令等の関係条項 |
1 |
統括安全衛生管理の進め方 1 安全施工サイクル 2 安全工程打合せの進め方の |
1 |
職長教育等の講師に関する規定はないことから、事業所において実施することも法令上は可能であるが、
教育項目から見て事業所において十分な知識等を有する講師を確保することは困難であると思えるので労働
災害防止団体等が実施する教育に参加させるのが望ましい。
なお、職業訓練法に基づく現場監督者訓練課程を修了した者など、上記教育項目について十分な知識や
技能を持っていると認められる労働者に対しては、一部または全部の教育事項を省略できる
(労安則40条3項)。
概ね5年ごと又は機械設備等に大幅な変更があったとき、職長等及び安全衛生責任者に再教育を受けさせることが望ましいこと。
危険又は有害業務従事者に対する教育(労安法60条の2)
「事業場における安全衛生水準の向上を図るため、危険又は有害な業務に現に就いている者に対し、その従事する
業務に関する安全又は衛生のための教育をを行うよう努めなければならない。」と労安法60条の2第1項にて規定され、
同条第2項において適切かつ有効な教育の実施のための指針を公表し、次表のものが公示されている。
本条に基づく教育の実施は努力義務規定ではあるが、危険又は有害な業務に起因する労働災害、健康障害を防止する上できわめて重要であるので実施に努めるべきである。
番号 | 教 育 内 容 等 |
---|---|
1 | 揚貨装置運転士安全衛生教育について |
2 | ボイラー(小型ボイラー等を除く)取扱業務従事者安全衛生教育 |
3 | ボイラー溶接業務(小型ボイラー、小型圧力容器を除く)従事者安全衛生教育 |
4 | ボイラー整備士安全衛生教育について |
5 | クレーン運転士安全衛生教育について |
6 | 移動式クレーン運転士安全衛生教育について |
7 | ガス溶接業務(技能講習が必要なもの)従事者安全衛生教育 |
8 | フォークリフト運転業務(技能講習が必要なもの)従事者安全衛生教育 | 9 | 車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転業務従事者安全衛生教育 |
9の2 | 車両系建設機械(基礎工事用)運転業務従事者安全衛生教育 |
10 | フォークリフト運転業務(特別教育が必要なもの)従事者安全衛生教育 |
11 | 機械集材装置運転業務従事者安全衛生教育について |
12 | ローラー運転業務(特別教育の必要なもの)従事者安全衛生教育 |
13 | 有機溶剤業務従事者安全衛生教育 |
14 | チェーンソーを用いて行う伐木等の業務(特別教育の必要なもの)従事者安全衛生教育 |
15 | 玉掛業務従事者安全衛生教育について |
16 | 特例緊急作業(電離放射線障害防止規則第7条の2第3項の作業)従事者安全衛生教育 |
番号 | 教 育 内 容 等 | 1 | 電気工事作業指揮者に対する安全教育について |
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2 | 車両系荷役運搬機械等作業指揮者に対する安全教育について |
3 | 積卸し作業の作業指揮者等に対する安全教育について |
4 | 木造建築物の解体工事の作業指揮者等に対する安全教育 |
5 | クレーン組立・解体作業指揮者に対する安全教育について |
6 | 工事用エレベーター組立・解体等作業指揮者に対する安全教育について |
7 | ストラルドキャリヤー運転業務従事者安全衛生教育について |
8 | プレス機械作業従事者に対する安全教育について |
9 | 刈払機取扱作業者に対する安全衛生教育について |
10 | 斜面の点検者に対する安全教育について |
11 | 建設業等において「携帯用丸のこ盤」を使用する作業に従事する者に対する安全教育について |
12 | 天井クレーンの定期自主検査者に対する安全教育について |
13 | 移動式クレーンの定期自主検査者に対する安全教育について |
新 規 入 場 者 教 育
建設工事現場では、その現場で就労してから短期間のうちに被災することが多いことから
新規入場の際に必要な教育を実施して、災害を防止しようというもので、法令上の規定はないが、
災害防止上きわめて有効なものである。
実施は、現場の災防の責任を負う特定元方事業者が行うのが適切で、資料等を整備のうえ実施すべきである。
教育科目は、厚労省の「安全管理指針のポイント」で次のように示されている。
① 労働者が混在して作業を行う場所の状況
② 労働者に危険を生ずる箇所の状況
③ 混在作業場所において行われる作業相互の関係
④ 退避の方法
⑤ 指揮命令系統
⑥ 担当する作業内容と労働災害防止対策
⑦ 安全衛生に関する規定
⑧ 建設現場の安全衛生管理計画の内容
対象者が一人だからといって省略せず、確実に実施し、教育内容は記録しておくこと。
教育の際、資格状況、労災・社会保険の加入状況等必要な事項を確認しておくこと。
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