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一人親方

 鹿児島建設一人親方会

中小事業主

 人事アップぷらす

提  携  先

社会保険労務士事務所

   人 事 ア ッ プ

労 働 契 約 と は

1 労働契約の意義等

 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働する義務を負い、使用者が労働者に対して賃金を支払う義務を負うことを内容 とする契約である。
 労働契約は労働契約法3条に、
①対等の立場における合意に基づき、②就業の実態に応じて、均衡を考慮し、③仕事と生活の調和にも配慮して締結、変更しなけれ ばならず、労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義誠実の原則に従って誠実に権利を行使し、義務を履行して権利 を濫用してはならないと規定されている。

2 労 働 者 と は

 「労働者」とは、労基法では「職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支 払われる者をいう。」(9条)とされ、使用者の指揮命令を受けて労働し、かつ賃金を支払われている者であると定義されている。 しかし、現実には、指揮監督の程度及び態様の多様性、報酬の性格の不明確さ等から、この判断が困難な場合があり、その場合には、 労働者性の判断に当たっては、労務提供の形態や報酬の労務対償性及びこれらに関連する諸要素をも勘案して総合的に判断すること が必要となる。
 その判断基準として、
労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準につい て」
に示されている。

3 労働契約と請負契約

 民法によれば、請負とは「当事者ノ一方カ或ル仕事ヲ完成スルコトヲ約シ相手方カ其仕事ノ結果二対シテ之ニ報酬ヲ与フル」も のであり(第623条)、「当事者ノ一方力相手方ニ対シテ労務二服スルコト」(第623条)とする雇用契約とは異なるものとされている。
 したがって、請負契約による下請負人は、当該業務を自己の業務として注文主から独立して処理するものである限り、たとえ本人が 労務に従事することがあっても本条の労働者となることはない(昭23.1.9 基発第14号、昭63.3.14 基発第150号・婦発第47号)。
 しかし、土建業等に多く見られるが、形式上は請負のようなかたちをとっていても、その実体において使用従属関係が認められると きは、当該関係は労働関係であり、当該請負人は本条の労働者であることになる。
 この実体判断についての基準を示す適切な解釈例規はないが、職業安定法施行規則第4条は、請負か労働者供給事業かの区別の基準を、また、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める告示は、請負か労働者派遣事業かの区 別の基準を、それぞれ具体的に示しており、この場合にも参考になると考えられる(同告示の質疑応答集も参照のこと。)。
 なお、土建業で多く行われている「手間請け従事者」については、労働基準法研究会から判断基準が示され、国交省のパンフレットに 「一人親方」判定のチェックリストが記載されている。なお、「一人親方」に該当する場合の労災保険の特別加入については、 「鹿児島建設一人親方会」へどうぞ。


労働契約の締結・変更

1 労働契約の締結

 労働契約は、契約書などの書面がなくても労使当事者の合意があれば成立する。労働契約の内容は、労使の自主的な決定によ ることになるが、労基法や労働協約(使用者と労働組合との取り決め)で定める労働条件を下回る内容で労働契約を結んでも、その 下回る部分は無効となり、その部分は、労基法または労働協約で定める基準によることになる。
 また、労働契約で、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定めても、その基準を下回る部分は無効となり、その部分は就業 規則で定める労働条件によることになる(労働契約法12条)。
 なお、労働契約の禁止事項として、
①違約金・損害賠償額の予定(労基法16条)
②前借金と賃金の相殺(労基法17条)
③強制貯金(労基法18条)
が定められている。

2 安全配慮義務

 使用者は、労働契約にともない、労働者の生命・身体等の安全に配慮しなければならない。
 この安全配慮義務は、確立した判例法理を法文化したもので、労働契約を締結すれば契約に付随して当然に発生する使用者の義務 でうある。
 また、使用者が配慮すべき労働者の「生命・身体等の安全」には、労働者の心身の健康も合まれ、特に、過重労働による脳・心臓 疾患等の防止、仕事上のストレスなどによる心の病気の防止のため、使用者は、業務管理や職場環境の整備に配慮する必要がある。

3 労働契約の変更

 労働契約(労働条件)の変更は、合意が原則であるが、合意できなかった場合は就業規則を変更することにより労働契約を変更 することができる。
 なお、労働契約法は、労働基準法や労働安全衛生法等とは異なって処罰規定はなく、民事上の効力のみを有することから、裁判に よって決されることになる。

就業規則による労働条件の変更についてはこちら

4 労働契約の期間

 有期労働契約による場合は、契約期間に上限があり、原則として3年を超える契約は許されず、仮に3年を超える契約を結んで も、その契約期間は3年となる(労基法14条)。
 ただし、
 ①一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの(例:土木事業等の有期的事業で、その事業の終期までの期間を定める契約)
 ②労基法第70条による職業訓練のため長期の訓練期間を要するもの
については、3年を超えることが認められ(更新はできない。)、
さらに、
 ③高度で専門的な知識等を有する労働者
 ④満60才以上の労働者
については、5年までの契約が認められている。


有 期 労 働 契 約

1 有期労働契約の書面確認

 有期労働契約については、反復更新されてきた契約が、経営上・業務上の理由から、突然次の期間満了をもって終了を告げられ、 更新や雇止めをめぐって労使当事者間でトラブルとなるケースが増えている。
 このようなトラブルを回避するためには、更新条件(更新の有無・更新するかしないかの判断の基準など)について契約締結の際、 あるいは更新時などにできるだけ書面で確認をとっておくことが重要である(労働契約法4条)。

2 契約期間を決めるときの配慮

 有期労働契約による場合、会社の事情に応じていつでも労働者に辞めてもらえるように、短い契約期間を定めておき、契約の更 新を繰り返す事例も見られる。
 しかし、期間は、例えば業務の性質など本来の契約の趣旨・目的に合った設定をすべきであって、必要以上に細切れな契約の更新を 繰り返すことは、労働者が不安定な立場に立たされるだけでなく、更新・雇止めをめぐるトラブルのもとにもなることから、使用者は、 一定の期間使用するという目的に照らして、必要以上に短い期間の有期労働契約とならないよう配慮しなければならないこととされて いる(労働契約法17条

3 締結、更新及び雇止めに関する基準

 有期労働契約の更新や雇止めをめぐるトラブルを未然に防止するために、労基法に基づいて、厚生労働大臣の告示( 「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」)で、契約締結 時の明示事項や、雇止めをする場合のルールが示されている。
(1)更新条件などの明確化
① 使用者は、有期契約労働者に対して、契約締結時に更新の有無を明示しなければならない。
   【更新の有無の明示例】
    ・自動的に更新する
    ・更新する場合があり得る
    ・契約の更新はしない
② 「更新する場合がある」と明示したときは、契約を更新する場合またはしない場合の判断の基準を明示しなければならない(契約 締結後に変更したときも同じ)。
   【判断の基準の明示例】
    ・契約期間満了後の業務量により判断する
    ・勤務成績・態度により判断する
    ・労働者の能力により判断する
    ・会社の経営状況により判断する
    ・従事している業務の進捗状況により判断する
(2)雇止め法理
 次の①、②のいずれかに該当する有期労働契約の場合に、使用者が雇止めをすることが、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上 相当であると認められないとき」は、労働者の反対の意思表示により使用者に雇止めが認められず、従前と同一の労働条件で、有期労働 契約が更新される(労働契約法19条)。
①過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの
②労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があ ると認められるもの
(3)雇止めの予告
 有期労働契約を更新しない場合には、あらかじめ更新しないことが明示されている場合でない限り、少なくとも契約期間が満了する日 の30日前までに、更新しないこと(雇止め)を予告しなければならない。
 雇止めの予告をしなければならない場合
①契約を3回以上更新
②1年以下の契約期間の労働契約が更新されて、最初の契約から継続して通算1年を超えるとき
③1年を超える契約期間の労働契約
(4)雇止め理由の明示
 雇止めの予告後、労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、使用者は遅滞なく証明書を交付しなければならない(雇止 め後に労働者から請求された場合も同じ)。
 雇止めの理由は、「契約期間が満了したから」という理由だけでは不十分である。
【雇止めの理由の明示例】
・前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため
・契約締結時当初から更新回数の上限を設けており、本契約が当該上限にかかるため
・事業縮小のため
・業務遂行能力が十分でないと認められるため
・勤務不良のため(職務命令違反・無断欠勤等)
(5)契約期間に対するを配慮
 1回以上更新し、1年を超えて継続して雇用している場合は、契約の実態やその有期契約労働者の希望に応じて、契約期間をできる限 り長くするよう努めなければならない。
(6)不合理な労働条件の禁止
 有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることにより不合理に労働条件を相違させることは禁止されている(労働契約法20条)。
 労働条件の相違が不合理と認められるかどうかは、
①職務の内容(業務の内容および当該業務に伴う責任の程度)
②当該職務の内容および配置の変更の範囲
③その他の事情
を考慮して、個々の労働条件ごとに判断される。

4 期間途中の解雇と退職

 有期労働契約の期間中は、「やむを得ない事由」がある場合でなければ労働者を解雇することはできない。
 また、有期労働契約の期間途中で、労働者から使用者に退職を申し出ることができるのは、民法上は 「やむを得ない事由」がある場合に限られる(民法628条)。
 しかし、労基法137条により当分の間、契約期間の初日から1年を経過すれば、労働者のほうからは、「やむを得ない事由」がなくても、 使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができるとされている(ただし、一定の事業が完了するまでの期間を契約期間とす る場合や契約期間の上限が5年まで認められている場合は、対象とならない。)。

5 無期労働契約への転換

 同一の使用者との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換す ることになる。


①申込み…現在の有期労働契約期間中に、通算契約期間が5年を超える場合、その契約期間の初日から末日までの間に、無期転換の 申込みをすることができる。
②転換…①の申込みをすると、使用者が申込みを承諾したものとみなされ、無期労働契約が成立する。
 無期に転換されるのは、申込み時の有期労働契約が終了する翌日からです。
①の申込みがなされると③の無期労働契約が成立するので、②時点で使用者が雇用を終了させようとする場合は、無期労働契約を解約 (解雇)する必要がありますが、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合」には、解雇は権利濫用に該当す るものとして無効となります。
③無期労働契約…無期労働契約の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は、別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と 同一となります。別段の定めをすることにより、変更可能です。
「別段の定め」とは 、労働協約、就業規則、個々の労働契約(無期転換に当たり労働条件を変更することについての労働者と使用者と の個別の合意)が該当します。
なお、無期転換に当たり、職務の内容などが変更されないにもかかわらず、無期転換後の労働条件を低下させることは、無期転換を円 滑に進める観点から望ましいものではありません。
④更新…無期転換を申し込まないことを契約更新の条件とするなど、あらかじめ労働者に無期転換申込権を放棄させることはできませ ん(法の趣旨から、そのような意思表示は無効と解されます)。



6 無期労働契約への転換の特例

 次の者については、無期労働契約への転換の特例が認められている。
①「5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている業務」に就く高度専門的知識等を有する有期雇用労働者
②定年後に有期契約で継続雇用される高齢者
 特例を適用すると、契約期間が5年を超えても無期労働契約への転換申込み権が発生しない。
①の者は業務が終了するまで(最長10年)
②の者は定年後引き続き雇用されている期間

転換の特例の詳細(厚労省のパンフレット)

高 年 齢 者 雇 用

1 高年齢者雇用安定法の規定

 同法第9条において、  「定年の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置のい
ずれかを講じなければならない。」と規定している(これを「高年齢者雇用確保措置」と呼ぶ)。
①当該定年の引き上げ
②継続雇用制度の導入(関係グループ企業等で引き続き雇用する契約を結ぶ措置も含まれる。)
③当該定年の定めの廃止
 継続雇用制度や定年の引き上げ・廃止といった高年齢者雇用確保措置によって確保されるべき雇用の形態については、必ずしも労働者 の希望に合致した職種・労働条件による雇用を求めるものではなく、さらに、本措置の趣旨を踏まえたものであれば、常用雇用のみなら ず、短時間勤務や隔日勤務なども含めて多様な雇用形態が認められている。
 つまり、継続雇用後の労働条件については、高年齢者の安定した雇用を確保するという法の趣旨を踏まえたものであれば、雇用に関す るルールの範囲内で、労働時間、賃金、待遇などについて、事業主と労働者の間で決めることができることになる。
 「再雇用制度」 を採用した場合は、一度定年退職となり、その後、企業と新しい労働条件を結び直すことになり、過去の賃金、役職、 待遇、などはご破算になる。
 高年齢者雇用安定法は、あくまで65歳までの雇用の場を提供することを求めており、新たな労働条件が労働者の希望に合わず、結果 的にその労働者がその後の再雇用を拒んだとしても、法違反とはならない。

2 希望者全員を対象としないこともできる

 高年齢者雇用安定法には、もうひとつ別の緩和策措置も用意されていた。それは、企業側は継続雇用の対象となる労働者を再雇用す るに際し、一定の基準を定め、この基準に適合した労働者だけを再雇用の対象にすることができた。
 すなわち、基準に合わない社員は再雇用の対象からはずし、再雇用を希望する者全員を継続雇用の対象とする必要はなかったが、平成 24年の改正では、この緩和規定が廃止された。
 これにより企業は平成25年4月1日から継続雇用の対象となる労働者が希望すれば、その全員を再雇用の対象にしなければならないこ とになったが、この規定廃止には経過措置が設けられ、継続雇用の対象となる労働者の再雇用について何らかの基準を定めていた場合は、 老齢厚生年金の支給開始年齢に応じて以下のとおり、指定された年齢以上の労働者については引き続きその基準が有効である。


老齢厚生年金の支給開始年齢
期     間 年   齢
平成25年4月1日~平成28年3月31日 61歳以上の者
平成28年4月1日~平成31年3月31日 62歳以上の者
平成31年4月1日~令和4年3月31日 63歳以上の者
令和4年4月1日~令和7年3月31日 64歳以上の者

 なお、当該基準がない場合であっても必ず再雇用しなければならないわけではなく、心身に故障がある者や勤務状況が著しく不良 である者など、就業規則で解雇・退職事由に該当する場合は継続雇用しないことができる(もちろん、客観的に合理的な理由があり、 社会通念上相当であることが求められる)。

3 高年齢雇用継続に対する支援給付

 高年齢者雇用確保措置の円滑な導入のため、高年齢者雇用安定助成金の制度がある。
 また、高年齢労働者に対する支援として、60歳時点の賃金の61%超75%未満に低下した場合は、その低下率に応じて、各月の賃金 の15%相当額未満の額を60歳から65歳まで支給する高年齢雇用継続給付の制度が設けられている。

詳細 高年齢者雇用安定助成金  高年齢雇用継続給付

短時間(パート)労働

1 短時間労働者

 短時間労働者とは、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下、パート労働法という)2条に、「1週間の所定労働 時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう」と定義され、パート、アルバイト、 準社員、臨時、契約社員、嘱託等、どのような名称で呼ばれていても、この定義に合致すれば、すべて「短時間労働者」となる。
 すなわち、通常の労働者より少しでも所定労働時間が短ければ「短時間労働者」に該当し、パート労働法の適用を受ける。

2 事業主等の責務

 パート労働法では、事業主等の責務として、短時間労働者の就業の実態等を考慮して、
 ①適正な労働条件の確保
 ②教育訓練の実施
 ③福利厚生の充実
 ④その他の雇用管理の改善に関する措置
 ⑤通常の労働者への転換を図る等の措置
等を講ずることにより、短時間労働者について、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保を図り、その有する能力を有効に発揮する ことができるように努めることとされている(パート労働法3)。
 また、短時間労働者の雇用管理の改善などを図るため、事業主が行わなければならない措置については、 「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等につい ての指針」で示されている。

3 労働条件の明示

 労基法15条ではパートタイム労働者も含めて、労働者を雇い入れる際には、 労働条件を明示することが事業主に義務付けられているが、パート労働者に対してはさらに加えて、昇給 の有無退職手当の有無賞与の有無の3つの事 項を文書の交付など(労働者が希望した場合には電子メールやFAXでも可能)により、速やかに、パートタイム労働者に明示する ことが義務付けられている(パート労働法6)。
 なお、上記の3つの事項以外については、文書の交付などにより明示することが努力義務とされている。

パート労働者の雇入通知書

4 短時間労働者の就業規則

 常時10人以上の労働者を使用する場合は、就業規則を作成・届け出なければならない(労基法89)が、短時間労働者を雇用する場合 には、短時間労働者にも適用される就業規則を作成し、届け出る必要がある。仮に、一般の就業規則から短時間労働者が除かれている場合 には、短時間労働者に適用する就業規則が必要となる。
 また、就業規則を作成し、または変更しようとするときは、その事業場の労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない (労基法90)が、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、または変更しようとするときは、その事業場の短時間労働者の過半 数を代表する者の意見も聴くことが求められている(パート労働法7)。

5 労働時間・休日・休憩

 短時間労働者の多くは、労働時間が短いこと、労働日数が少ないこと、労働日や労働時間が自己の都合に合うことなどを重視してい ることが多い。
 このため、「パート指針」では、短時間労働者の労働時間や労働日を決めたり変更したりするときは、短時間労働者の事情を十分に考慮 することと同時に、所定労働時間を超えた労働や所定労働日以外の日の労働については、できるだけ行わせないように努めることとされて いる。
 なお、労働時間・休日、時間外労働や休日労働の割増賃金、休憩時間等の規定は、当然、通常の労働者と同様に短時間労働者にも適用さ れる。

6 短時間労働者の年次有給休暇

 短時間労働者についても、その所定労働日数に応じて年次有給休暇を付与しなければならない(労基法39)。
 なお、雇用期間を決めて働いている契約社員やパートタイム労働者なども、契約を反復・更新して6ヵ月以上継続して勤務すると年次有 給休暇の権利が発生する。

パート労働者の年次有給休暇の付与日数

7 短時間労働者の労働契約の期間

 労働契約の期間を定める場合には、原則として3年(満60歳以上の労働者との契約については、5年)以内としなければならないが、 短時間労働者も一定の期間を定めて雇用される場合には、「期間の定めのある契約」(有期労働契約)として、有期労働契約の規制の対象 となる。
 有期労働契約については、労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新す ることのないよう配慮しなければならないこととされている(労働契約法17)ので留意しなければならない。

8 賃金の決定方法

 短時間労働者の賃金の決定については、次によることとされている。
(1)短時間労働者の賃金については、通常の労働者との均衡を考慮して、職務内容、成果、意欲、能力、経験等を勘案して決定するよう努め ること(パート労働法9①)
(2)通常の労働者と職務内容が同一の短時間労働者については、賃金を通常の労働者と同一の方法で決定するよう努めること(パート労 働法9②)
 なお、事業主には、労働条件にかかる文書の交付等、就業規則の作成手続、差別取扱いの禁止、賃金の決定、教育訓練、福利厚生施設、 通常の労働者への転換に関して措置することとなっている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、労働者から説明を求め られた場合には、これについて説明しなければならないこととされてる(パート労働法13)ので、賃金の決定方法を決めるに当たって考慮し た事項についても、説明できるようにしておかなければならない。

9 退職手当、通勤手当等の決定

 短時間労働者の退職手当や通勤手当等の職務に密接には関連しない賃金についても、就業の実態や通常の労働者との均衡を考慮して定 めるよう努めるものとされている(パート指針)。

10 健 康 診 断

 短時間労働者についても、「常時使用する労働者」に該当すれば、安衛法66条に定めるところにより健康診断(雇入れ時及び定期)を 行う必要があり、一般健康診断を行うべき「常時使用する短時間労働者」には、次の①及び②のいずれの要件をも満たす者が該当する。
① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の更新により1年 (特定業務に従事するパートタイム労働者にあっては6ヵ月。②において同じ。)以上使用されることが予定されている者及び当該労働契約 の更新により1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること
② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であ ること
 なお、労働安全衛生法によって、健康診断の実施が義務付けられていない労働者についても健康診断を実施することが望ましいとされて いる。

11 短時間雇用管理者

 パート労働法では、常時10人以上の短時間労働者を雇用する事業所ごとに「短時間雇用管理者」を選任するように努めなければならな いと定められている(パート労働法15、パート労働則6)。
 短時間雇用管理者は、短時間労働者の適正な労働条件の確保及び雇用管理の改善等に関する事項を管理することになるので、職務遂行に 必要な知識及び経験を有していると認められる者のうちから選任する必要がある(パート労働則7)。

12 教育訓練、福利厚生施設

 短時間労働者については、教育訓練や福利厚生施設の利用についても、通常の労働者と同様に取扱うように努力や配慮が求められてい る(パート労働法10、11)。
 具体的には、キャリアアップ訓練などについて、短時間労働者の職務内容、成果意欲等に応じて実施したり、給食施設や休憩室、更衣室な どを通常の労働者の同じように利用する機会を提供する努力や配慮が必要です。

13 差別取扱いの禁止

 短時間労働者であっても、通常の労働者と同視すべき労働者については、賃金、教育訓練、福利厚生をはじめ、そのすべての待遇を差別 的に扱うことが禁止されている(パート労働法8)。
 「通常の労働者と同視すべき労働者」とは、① 職務内容が同じ、② 人材活用の仕組みや運用などが、全雇用期間を通じて同じ、③ 契約 期間が実質的に無期契約である短時間労働者となっている。

14 通常の労働者への転換

 短時間労働者を雇用する事業主は、短時間労働者を通常の労働者へに転換することを推進する措置を講じなければならない(パート労働 法12)。
 具体的には、次の措置またはこれに準ずる措置である。
 ① 通常の労働者を募集する場合、その募集内容を既に雇っている短時間労働者に周知する
 ② 通常の労働者のポストを社内公募する場合、短時間労働者にも応募の機会を与える
 ③ 短時間労働者が通常の労働者へ転換するための試験制度など転換制度を導入する

15 苦情・紛争解決の仕組み

 短時間労働者から苦情の申出を受けたときは、事業所内で自主的な解決が図られるよう努めなければならない(パート労働法19)。

試用期間

 本採用を決定する前に、一定期間、その労働者の能力や適性を見極めるための試用期間を設ける場合は、そのことを契約のとき に明示しておくことが必要で、明示がなければ、始めから本採用したことになり、試用期間中であっても、原則として労基法が適用 されるほか、社会保険などの資格取得手続きも行わなければならない。
 なお、試用期間中に解雇する場合、期間が14日を超えたときは解雇予告が必要となる。

試用期間の法的な意味 試用期間の長さの考え方

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